« 2007年7月 | トップページ | 2007年9月 »

2007年8月31日 (金)

イノモケ文学賞公開選考レポ

(「高原英理×東雅夫トークショーレポ」のつづき)

 さて、募集から1週間で締め切りというスケジュールで開催された、イノモケ文学賞ですが、66篇もの作品が寄せられました。どれもこれもあの手この手でイノモケの魅力を引き出す傑作ぞろいであります。

 高原英理さんから、30編が選出されます。配布された応募全作品のプリントの順に沿って、30編読みあげられます。自分の作品が近づくと緊張してしまいます。僕の「箒」は選に入っていました。うっしっ。
http://blog.bk1.jp/genyo/archives/2007/08/post_1068.php
 高原さんは、春乃蒼さんの作品を4つも挙げておられます。感心する作風もあれば、「母の手」など非常にいやな思いまでさせてくれる、幅の広い作家さんだと、評価されておりました。

 つづいて、東雅夫さんの30選も挙げられます。こちらはあらかじめweb上で公開されてましたが、あらためて読みあげられます。東さんは、一作家は一作品というみずからの決めで選出されたようです。
http://blog.bk1.jp/genyo/archives/2007/08/post_1067.php

 ふたりのベスト30に共通に入っている作品は多く、18作。僕の「箒」も両方、ランクインです。おおおおおっ。
 全応募作に沿って、印象に残った作品、作家さんの所感が述べられてゆきます。
 松本楽志さんの作品イメージの訴求力。中根さんの条件のうまいお笑いぶり、君島さんの渋いうまさ、東さんは「嵐」に感銘を受けたそうです。日野作品の異色さ。不狼児さんの相撲怪談をふまえた作風。軽美伊乃さんの斬新であり、玄人好みの作品。甘南美さんの不思議さと最後のおどろき、高原さんの点数の高い作品です。ヒモロギさん「三尺坊」のうまさ。座我さんの面白さとひねり、松音戸子さんのSF版稲生、最後のSF馬鹿ラストも高評価。小松さんは「ちょっと泣かせる」「結構きた」と多大な評価。勝山さんは手堅く、毎回実によく作りこんでいる。今回の作品はジブリ風とのこと。葦原さん「八月一日」しつこく続いてゆく悪夢な感じがよい。久遠さん、広島といえば誰かが触れるであろう題材をうまく少年の叙情でとらえたよい作品。朱雀門出さんの宮沢賢治風のしみじみさ。クジラマクさんの毒に満ちたアメリカ怪談。仙人掌さんのユーモア。迷跡さんの鴎外な印象もあるおとぎばなし。などなど。
 僕の「箒」は、着眼点と「この箒がいいのよ、凛として」という高原さんのことばと、東さんからは最後の方で明かされるところがよい、とのことばをいただきました。僕はそのとき、うつむいてました。

 いよいよ、しぼってゆく段階です。公開選考会です。高原さんがはじめられた企画なので、高原さん主導ですすめられてゆきます。
 小松さん、甘南美さん、の作品についで、おどろいたことに僕の「箒」も最終候補に挙げられました。大賞決定は、すぐには出ません。高原さんも苦悩されてます。
 もう、ボルテージあがりっぱなし、緊張しまくりです。
 結果は、それでも順当に、

最優秀賞  小松風鐸「畜生の独白」
高原英理賞 甘南備あさ美「三次育ちじゃけ牡蠣あんまり食べんかった」
東雅夫賞  君島慧是「嵐」

 と決まりました。
 このご三方には賞品が送られます。しかし、この場には3人ともいらっしゃいませんでした。

 ところで、今回応募された方で、今日の選考で名前が出た方は前に出てください、とのことで6名ほどの人が、立ち上がります。僕も出ます。
 みなさんの前で、マイクを渡され、一人一人自己紹介。思いもがけないことで、こんなことだったら、ヒゲくらい剃ってくるんだったとはげしく後悔。
 賞品を応募されたみなさんにもさしあげます。残ったもので、お好きなものを取ってください。このなかでは、まずは、添田さんから。との高原さん。へこへこしながら、たくさんの賞品の前に立ちます。お知りあいの勝山さんが「ハウス、ハウス」と誘導的な声をかけてきますが、宇野作品が好きなので、寺山修司「ひとりぼっちのあなたに」画:宇野亜喜良を取りました。

 最後に締めとしてのイノモケ文学賞の総括などがまとめられます。

 一週間でも、てのひら作家さんたちによる、これだけの質の高い応募があったのですから、これからも突発的でもこうしたイベントはぜひ、おこなってください。たいへん有意義だと思います。選考が丁寧で、多くの作家に言及があり、作品に講評をいただけるので、書き手としても、多大な励みにもなり、作品向上の気づきにもつながります。僕も高原さん、東さんの評価をいただいて、自信につながりました。賞は逸したけれども、得たものは大きく、この日のことは忘れないです。

 時間も予定の17時を過ぎていましたが、こちらも公募されていたイノモケのイラスト部門の作品披露です。そのあとはサイン会になります。

(つづく)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年8月30日 (木)

高原英理×東雅夫トークショーレポ(その1)

542785605_88
542785605_39
 8/25 15時45分ごろ

 暑いなか、青山ブックセンター本店に到着。
 販売品の売り子として佐藤弓生さんがいらっしゃいました。
 高原英理さんの著作(秋里名義も含む)や「稲生物怪大全」陰の巻、陽の巻などがずっしりと積まれていました。ぶあつい稲生本が山になっている光景は圧巻です。
 席に着くと、なんと今回応募があった「イノモケ文学賞」の全応募66作が一挙に掲載された印刷物がありました。作者と作品名一覧があるくらいだろうと考えていたのに、これは重宝します。毎日さんが徹夜に近い労力で短時間に作成してくれたそうです。深謝。

 16時になり、高原英理さん、東雅夫さん登場。拍手。
 まずは、タイムテーブルの説明。
 それから、東雅夫さんによる「稲生物怪録」とはなんぞやという解説。おふたりの背後に稲生物怪録の図版のスライドショーが流れます。けむくじゃらの怪物と稲生平太郎の格闘など、巨大な画面で見るとすさまじいものが。
 稲生平太郎と物怪の30日間におよぶ肝試し知恵くらべのようすが紹介されます。

 つづいて、広島にある稲生の舞台となっている、三次(みよし)に東さんが訪れた際の写真がスライドショーとなって紹介されます。比熊山ってこんなに人里に近いところにあったんですね。でも写真でみるだけでも霊験ある山に見えます。そのほか稲生神社や比熊山のふもとの写真、郷土資料館など。三次では稲生物怪録の怪異をかなり熱心に取りあげているそうで、資料館も充実しています。実在の人物としての稲生武太夫(平太郎の成人してからの名前)関連の写真も紹介。平太郎が怪異とであった寛延時代の三次のジオラマも映ります。
 そして、平太郎が30日間の格闘の末、最後にあらわれた魔王から、勇気をたたえられ、いただいた木槌がおさめられている神社の紹介。年に一度しかご開帳されない秘蔵の木槌の撮影はできなかったそうです。水木しげる先生、荒俣宏さん、京極夏彦さんがこの地を訪れたエピソードも披露されます。ここで水木先生はひとつの伝説を作られてしまったそうです。さすがです。

 そのあとは、宇野亜喜良さんによる「ぼくはへいたろう」の画集の紹介。高原さんの解説つきです。稲生物怪大全の陰の巻か陽の巻かちょっと失念しましたが、そちらに収録されていたのは見ていますが、あらためてすばらしい画集です。
 江戸時代が舞台だけど、森はドイツ風だし、物怪も西洋風のイメージ。構図がまたおみごとです。平太郎少年のちょんまげが印象あります。宇野さん流のアレンジがほどこされているのも特徴です。なるほど、ミミズよりカタツムリのほうが美的にはいいのですね。作品には出てこない猫が随所に描かれているのもアレンジみたいです。そういえば高原英理さんの新著「神野悪五郎只今退散仕る」の表紙も宇野さんですが、作品には出てこない犬が描かれているのは、これと対になっているのではないかという高原さんの考察。作品の主人公は少女なので、少年には猫、少女には犬という対比。

 さて、いよいよ小説『神野悪五郎只今退散仕る』についてです。
 高原さんの創作秘話が語られます。夢で着想を得た話などが披露されます。なるほど。 小説に政治や社会状況はどこまで取り込んだほうが、成功するかいなかのあたりの話なども。参考になります。
 これまでの著作をめぐる話なども。いまの小説書き志望のひとは確かに恵まれているかもしれません。

 10分の休憩をはさみ、このあとは「イノモケ文学賞」の作品紹介と大賞そのほかの発表です。

(つづく)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2007年7月 | トップページ | 2007年9月 »