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2007年12月23日 (日)

「吸血鬼/ヴァンパイア文学800・アート」賞授賞式&文芸朗読/トークショーレポ(その2)

(つづき)

 まずはアートの入選作の発表です。
 司会の方の背後の巨大なプロジェクターに作品が映し出されます。

アート入賞作品
Deino『狩人の月』
AtelierFIORE「中井英夫 月蝕領域宣言『殺人者の憩いの家 月光療法について』より
HISA『恍惚』

 入賞者のなかで、実際に会場にいらしたのはAtelierFIOREの方でした。
 作品解説がされます。
 HISAさんの『恍惚』はかわいらしいウサギのかたちをしたアイアン・メイデン(鉄の処女)が背後に並ぶなか、ゴスロリ衣装の少女が恍惚の表情で血を啜っていて、エプロンの前にも血がこぼれているというグロかわいい作品でした。東さんが「高原英理さんが好きそう」とおっしゃっていましたが、まさしくそのとおりでした。

 さて、文学賞の選考結果の発表です。
 まず、応募総数320篇を東さんと今野編集長がすべて目を通し、それぞれベスト10を選び、しぼられた作品を菊池さんが読み、大賞を決めるという方法がとられたことが説明されます。
 なお、東さんは作者名を知らない状態で作品のみを読み、選んだ結果、てのひら怪談などでよく知っているおなじみの名前ばかりが残ってしまったとのことです。経験ある作家が作品そのものの実力で選ばれたということなのでしょう。今野編集長のほうも作者名を伏せたまま読まれたそうです。もっとも東さんほどにはてのひら組の作家さんについて存じていないので、伏せていない状態でも自分のほうは選考にそれほど影響はなかったのではとも付け加えておられました。

東雅夫氏ベスト3
我妻俊樹「夜の部屋の舌」
立花腑楽「オカシラ様」
黒狗「さらば、吸血鬼」

 我妻さん以外の受賞者の方は会場にいらしたので、表彰が行われます。おおっ。

 つづいて、「夜想」編集長のベスト3
金子みづは「夜の向日葵」
田辺青蛙「杏の血」
田辺青蛙「七つの子」

 作者名を伏せたままで選んだための田辺さんの複数作受賞です。おふたりとも会場におられました。まあ、田辺さんは隣の隣におられたので、「会場におられました」という表現はふさわしくないか。田辺さん照れていました。

 そして、菊池秀行さんから大賞の発表。

大賞
金子みづは「夜想曲」

 金子みづはさんは、「てのひら怪談2」において、ちょうど僕の前に収録されていた作家さんなので、よくおぼえていました。「2」の「焼き蛤」とは異なった凄惨な作風に幅の広さを思い知らされました。
 受賞作がつづくので、前のほうに座っておられた金子さんは立ったり座ったりの繰り返しでした。たいへんそうですが、うらやましいといえばうらやましいです。

 そして、受賞作の「夜想曲」の朗読が先ほどのCafe凛堂の女性三人によって行われます。
 朗読のあとに東さんから説明があったのですが、当初は大賞作の朗読は予定になく、ぶっつけ本番で行われたそうなのですが、そんなことは微塵にも感じさせないみごとな朗読でした。先ほどの朗読も含めて、照明やSEの使い方も効果的でした。
 
 さて、総括の講評として、全体的にレベルが高く、ハイクオリティであり、作風の幅もバリエーションに富んでおり、審査はきわめてたいへんであったことが、まず東さんから述べられます。

 菊池さんも800字という縛りの上に、吸血鬼という難しいテーマを取り入れ、よくここまで多くの上質の作品が寄せられたものだと感心されてました。面白かったという言葉も。吸血鬼は映画でも題材もアイディアも出尽くした印象があるのに、これだけの切り口がまだまだ出てくる。新しい可能性を見た。みなさんの手垢のついていない新鮮さがみずみずしかったとしめくくられました。

「夜想」編集長は、800字という制限のなかではストーリー重視というわけにはいかず、雰囲気のみであらわす作品が多いかと思いきや、さまざまな手法が凝らされていて、構造的に作りこまれていて、意表を突かれた。新鮮味があったとおっしゃっていました。

 朗読されることが前提だったので、明らかにそれを意識された作品が多かったことも付け加えられます。

 さて、受賞にはいたらなかったけれども、ベスト10に入った作品が読みあげられます。
東雅夫氏ベスト10(前記3はのぞいて)
葦原崇貴「ただいま」
君島慧是「城と囚人」
クジラマク「ひかげもの」
田辺青蛙「あるがままに」
松本楽志「Myllokunmingia Draculia」
山本ゆうじ「血筆――ブルートグリッフェル」
夢乃鳥子「ウロボロス」

朗読向き作品
葦原崇貴「人殺し」
亀ヶ岡重明「日光ニモマケズ」
君島慧是「星月夜の丘」
クジラマク「饗宴」
田辺青蛙「数え鬼」
山下昇平「本、少女、血と」

番外
葦原崇貴「吸血鬼ハンター出井」

 番外の「吸血鬼ハンター出井」 とはもちろん、菊池秀行さんの作品のパロディです。菊池さんは苦笑いをされた上で、「いやがらせだ」とおどけた声でおっしゃっていました。

「夜想」編集長ベスト13(前記3はのぞいて)
金子みづは「夜想曲」
青山龍湖「少女中毒」
山本ゆうじ「血筆――ブルートグリッフェル」
松音戸子「もうひとつのラプンツェル」
松音戸子「人魚姫の姉」
早良敦司「阿片」
meg「ムーンシャイン」
仲町六絵「小さなライオン」
添田健一「闇に蠢く」
野棘かな「特別な種族」

次点
猫屋四季「独奏者」
葦原崇貴「ちすいおじさん」
春乃蒼「水中花」
西野りーあ「哀悼歌」
白縫「淑子」
山本ゆうじ「血缶販売機」

 正直、自分のランクインはあきらめかけていたので、おどろきました。メモの手が止まってしまったくらいに。
 暗がりの怪しげなムードの会場のなか、今野編集長から、「添田健一 闇に蠢く」という声が響き渡った瞬間は忘れられそうにありません。「闇に蠢く」というタイトルを文字どおり闇のなかで聞きました。
 近くの勝山さんが持ち上げの声をかけてくれました。感謝。

 あらためて総括。最終的に手だれの作家が残った実力本位の結果であったことが述べられます。ちなみに田辺さんは最多数投稿者であり、名前を伏せた状態でも東さんには田辺さんだとすぐわかったそうです。先ほどの朗読を思い起こすと、さもありなん、といいたいところです。杏のにおいのする吸血鬼物語は斬新だったとも。
 また、山本ゆうじさんの「血筆」、立花腑楽さんの「オカシラ様」には改めて高い評価がされます。立花さんの和風舶来テイストな吸血鬼は新鮮だったとのことです。
 
 寄せられた作品には散文詩や短歌もあったそうです。実は僕も「漢詩と吸血鬼」というネタを考えたのですが、実現できませんでした。力不足が残念なり。菊池秀行さんの作品には中国種吸血鬼の物語があり、美貌の吸血鬼が高青邱(高啓)の詩を詠む場面があるのですが、そういえばどうして高青邱なのでしょうか。吸血鬼との関連性も調べてみたのですが、さっぱりわかりませんでした。菊池さんはまず、屈原というイメージがあったと須永さんとの対談で語っておられましたが。

 来賓としていらっしゃったのは、平山夢明さんと福澤徹三さんでした。お世話になっております。

 まとめにはいり、金子みづはさんへのインタビュー。やはりというか金子さんはこれまでにも掌編で鍛えてこられた方だそうです。吸血鬼は書いていて楽しかったともおっしゃっていました。
 菊池さんが身を乗り出して、「結婚されてますか」とうかがわれ、またしても客席から笑いが起きました。

 司会の今野編集長がしめくくろうとされましたが、東さんの待ったの声がかかります。

 そうです。忘れてはいけません。このイベントはスタートでもあるのです。ほかでもありません。寄稿された高品質で斬新な吸血鬼掌編のおびただしい作品群をこのまま眠らせてしまう手はありません。ぜひとも出版、書籍化という動きに詰めるべきなのです。客席からも熱い要望の声があがります。僕もぜひとも読みたい作家の作品がたくさんあります。みなさんの熱意に応じて「夜想」編集長もきわめて前向きにとらえてくれたみたいです。共同で出してくれたらうれしいな。ぜひ、出しましょう。

 まずは学研から近日刊行予定である東さんの伝奇の9「吸血妖魅譚」。800字クトゥルー掌編集『リトル、リトル、クトゥルーテイルズ(仮)』の売れ行きがだいじとのことです。吸血鬼もクトゥルーも固定ファンが多くいるので、好評を得るのではないでしょうか。

 まとめのはずなのに、なぜか話がひろがってゆきます。菊池さんから、またマンガというジャンルにおいても吸血鬼は多く描かれていることが挙げられます。菊池さんが少年のころにも貸本屋のマンガに時代物の剣豪吸血鬼、忍者吸血鬼というおどろくようなものを見かけたそうです。メディアの差というものもありますが、まだまだ吸血鬼作品は幅が広がりそうです。忍者吸血鬼って、最近のマンガで見かけたおぼえがあります。「ヘルシング」は読んだことがないのですが、好評みたいですね。小谷真理さんも「テクノゴシック」で吸血鬼マンガ紹介で一節をさかれています。

 時の経つのはあっというまで、すでに22時を過ぎています。ポプラ社の斉藤さんと勝山さんと話しました。勝山さんも斉藤さんに(ご結婚を)おめでとうといい、斉藤さんも勝山さんに(受賞を)おめでとうございますとおっしゃっていました。2階のギャラリーにそろって移動。
 200円でワインがいただけるそうなので、列の最後尾につきます。そこへ、2階にあがってきた門賀さんに声をかけられ、地図を手渡されます。

 せっかくだから、このあとてのひら作家でどこかで飲みにゆきませんか、でも、自分はまだ会場を離れられないので、みんなの誘導と幹事をやってほしいとのことです。

 どうして僕なのでしょうか。金曜の深夜ですし、お店も見つかるでしょうか。と悩む暇もなく、早速みなさんに呼びかけてみます。「ゆくぜ、という方は挙手お願いします」僕を含めて12名の手が挙がります。おおっ。

 では、時間も時間なので、浅草橋駅前に移動です。誘導開始。
「そえさん、幹事なれしてますね」
 いやはやクジラマクさんにほめられるとは光栄至極なり。

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コメント

詳細なレポートありがとうございました
臨場感あふれる文章にこれがプロと僕の差だと実感しました
人の文を見ると自分に欠けてる物が分かります
いろんな意味でありがとうございました

投稿: nobori | 2007年12月24日 (月) 22時39分

コメントありがとうございます。
ひたすら長いレポートを読んでくださってありがとうございます。
暗いなかでメモを取っていたので、見聞きしたことは全部書いてやれ、と意地になっていたらこんなに長くなってしまいましたw

投稿: そえ | 2007年12月25日 (火) 02時06分

初めまして。遠方の為参加を断念した吸血鬼イベントでしたが、こまやかなレポートで様子を知ることができて、嬉しいです。関わった方々の表情や動きが目に浮かぶようです。大変勉強になりました。

投稿: rokue | 2007年12月25日 (火) 23時31分

コメントありがとうございます。
はじめまして。

だらだら長いレポートになってしまい、過剰なおほめの言葉をいただいて、恐縮しております。
また次のイベントの機会もあるかと思います。そのときはぜひ。

投稿: そえ | 2007年12月26日 (水) 07時31分

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