« 2008年1月 | トップページ | 2008年3月 »

2008年2月28日 (木)

こんなに嬉しいことはない

Yamashitasyojpeg_5
 
  
 山下昇平さんより、「食卓の光景」につづいて「象を探して」の挿画までいただきました。

 うれしすぎて胸が詰まり、ことばもでてきません。

 木村くんとさっちゃんをはじめとして、白い花の冠とか、作品の細かいところまで再現されている。さっちゃんの前髪もきちんとめくれあがっているし。

 西荻のマスコットであるピンクの象が宇宙を飛んでいるみたい。
 山下さんがそこまでご存知で描かれたのかわかりませんが、 僕は天文を題材にした作品をいくつか書いていて、今後も書くつもりなので、この背景は素直にうれしいです。

 楽しい絵なのに、ずっと見つめているとなんだか泣きたくなってきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月24日 (日)

石神茉莉『人魚と提琴(ヴァイオリン)』

人魚と提琴 玩具館綺譚 (講談社ノベルス イQ- 1) Book 人魚と提琴 玩具館綺譚 (講談社ノベルス イQ- 1)

著者:石神 茉莉
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 妖怪イベントなどでしばしばお会いする石神茉莉さんの初の長編幻想小説。
 これまで異形コレクションなどで短編を幾作品か読ませていただきましたが、長編に触れるのはこれがはじめてです。

 まずは、稲生物怪録を題材にした石神さんの短編「音迷宮」でもおなじみのあのふたりも出てきて、なつかしい知人に再会できた気分。
 おなじみのふたりとは、玩具館「三隣亡」のゾンビ好きの店主とその妹である美珠(みたま)。ふたりのやりとりも楽しいです。

「フェイクは玩具の基本です。虚構と現実の境が曖昧になるところが面白いのです」

 ストーリーは、ヒロインである女性の涼子の幼い日の幻想をもとに展開されてゆきます。
 村祭りのさなか、燃え盛る炎のなかでヴァイオリンを奏でる美貌の少年、かたわらで跳ねあがる人魚。
 この美しくも妖しく、そしてどこか根源の怖ろしさをひそめた幻想の記憶を中心に、鉱物や猫や人魚伝説やゾンビ映画やヴァイオリンといったモチーフをもとに物語は進んでゆきます。

 不意にはさまれる幻惑にみちた断章もまた心ゆらがさせられる。

 しっとりした流れのなかにも、唐突に残酷な現実が突きつけられる展開にもまた。


 登場人物では玩具館のふたりをのぞけば、響が好きだな。
 美珠が銃(ダブルデリンジャーというのですか)を構えて、ストーカー男に尋問する場面は、読者サービスっぽいですが、面白いです。ストーカーに対ゾンビ用銃ですか。「ダウト」という科白もよし。

 全体として安定度が高く、しっとりした幻想作品の趣です。
 初の長編小説ということを忘れさせるほどです。鉱石を眺めているような印象。
 シリーズ化するとよいのではないでしょうか。

 未読なので、同名タイトルの短編が収められている異形コレクションも読んでみよう。「幽霊船」も。


「胡散臭いものほど、好きです。面白いです。夢と現の境にあるもの。闇と光をあわせもったもの。日常を歪めてしまいかねないもの」

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年2月23日 (土)

「てのひら怪談2」bk1購入特典が届いた

02927474_2

 新芥川賞作家の川上未映子さんによる、新しい帯の登場。産経新聞の書評欄にも取りあげられ(未見)、いよいよ新しいステージに向かいつつある「てのひら怪談2」です。

 そしてまた、「てのひら怪談2」感想挿画がアップされているブログがスタート。


 どこのどなたか存じませんが、すばらしい挿画をありがとうございます。いまのところ岩里藁人さんの「シャボン魂」の耽美なる挿画がいちばんすきです。一日一作ペースでアップされていますが、百作全部なさるおつもりなのでしょうか。そうだとしたらうれしいかぎりです。


 さて、そんな「てのひら2」のbk1での購入特典が届きました
 ポプラ社の担当編集者さんである斉藤尚美さんによる全作感想。
 そして、ヒモロギヒロシさん、有井聡さん、クジラマクさんによる、新作と特典もてんこもりです。

 そうですか斉藤さん、「鼻の奥がツンと」されましたかw

 以下に新作の簡単な感想を書きます。ネタバレなので読みたくない人はここでひきかえしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒモロギヒロシ「中坊和賛」
 800字という文字制限のあるなかで、タイトルまでうまく使う技巧の冴えがまずお見事。
 大傑作「死霊の盆踊り」をどこか髣髴させながらも、今度は夢のなかが舞台で、アドバイスをくれる友人も有能というあたり、「死霊」との違いも引き立たせています。
 そうした友人の助言が功をなして、祈願は成就。雲の中に消えてゆく妹の姿が神神しく、泣けてしまいます。
 結末の中坊ならではの若さ爆発のラストもよし、です。

有井聡「竜巻」
 有井さんの作品を読むのはこれが2作目になるのですね。
「竜巻」というタイトルで巨大で暴力的な竜巻の大災害の模様が細かに書かれていながらも、実は怖いのは竜巻ではないところに、ただならないものを感じます。
 生きている人間は過去よりも未来のほうがはるかに大事ですものね。

クジラマク「盗聴器」
 無改行ロングプレイのきっかり800字怪談。すばらしい。さすがです。
 この作者ならではの不気味なイメージも800字のすべてにわたって充溢しています。
 それにしても、もともとは保養所であったにもかかわらず、なぜ使用されなかったのだろうか、あの生肉と写真はなんであろうか。そしてラストの玩具も謎です。ビジュアル的にイメージが思い描きやすいだけに、不気味な後味がいっそうひいていて、一読、忘れられない怪作。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月16日 (土)

武田泰淳『十三妹』

十三妹(シイサンメイ) (中公文庫) Book 十三妹(シイサンメイ) (中公文庫)

著者:武田 泰淳
販売元:中央公論新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 表紙挿絵は鶴田謙二。

 十三妹対白玉堂。
 最強女侠の十三妹とイケメン義侠の錦毛鼠こと白玉堂の対決。
 白玉堂が十三妹の耳かざりを斬って落とす場面が秀逸。これをやってのける白玉堂のつらにくさがいい。
 ラストは一大決戦を前にして、中途半端な印象があるのだけれども、それでも切ない雰囲気でした。
 萌え系十三妹が読めますw

 しかし、改めて読んで思ったのは、武田泰淳は白玉堂好きだね。
「ねずみの話」の章を読むとよくわかる。武田泰淳がネズミ年生まれだからというわけでもないでしょうが。たしかにねずみを名乗るイケメンヒーローは古今東西でもまれな存在かもしれません。
 強いのだけれども、やたら傲慢で、なんでも自分がいちばんではないと気がすまず、まわりをつねに騒がせている困った人物なんだけど、なぜか憎めず、義侠心も持ち合せているという、白玉堂という破格の人物造形がなかったら、あるいは今日の武侠小説の隆盛もなかったかも知れません。 

 十三妹の清の時代に、実際には700年も前の宋の時代のヒーローを引っ張ってきて、対決させるという発想がすごい。
 包裁判官も展昭も出てきますが、この作品では展昭は出番も少なく、活躍も特にないです。

「女賊の哲学」も読もう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月13日 (水)

山下昇平さんより

080211_5

 山下昇平さんより、「てのひら怪談2」の拙作「食卓の光景」の挿画をいただきました。
 許可をいただいたのでブログにて公開してみます。
 ぐひゃひゃひゃっ。うれしくて笑いがとまりません。

 少し冷静になって、じっくりと観ると「ああこれはたしかに食卓の光景だな」と感じ入りました。白い情景に目頭が熱くなってきます。涙を誘われます。
 すばらしいものをまことにありがとうございます。
 挿画を折りにつけて、観ています。
 山下さんは僕の旧作「みずうみ」も読んでくださったようで、感謝感激のあまり言葉がでてきません。下手の横好きでも、書きつづけていてよかったと思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月10日 (日)

山本タカトの吸血鬼世界トークショーレポ

2/9 18:30

 浅草橋のギャラリー、パラボリカ・ビスへ。
 ほどなく雪に変わるであろう氷雨が降りそぼっていました。

 2階のギャラリーへいって、まずは受付を済ませます。
 吸血鬼映画フィルムの写真数点。デスマスクも数点飾られていました。
 昨年末の800字吸血鬼小説の優秀作も展示されていました。鮮血とも深紅の薔薇ともとれる厚紙に縁取られて展示されています。この体裁で改めて読むとさらに味わい深いものがありました。血の装いとでもゆうべき華麗さ。腑楽さん、まだ拝見されていなかったら、ぜひ見にゆくべきですよ。
 吸血鬼アートも展示されています。これも先日パネルや縮小された印刷物で観たのとは大きく印象が違いました。やっぱり実物の威力というものは確かにあるのですね。

 そして、山本タカト展『吸血鬼逍遥』。展示に関しては後述します。あまりの耽美さに窒息しました。

 友人数名に会う。てのひら作家さんも何人か来られるかと思ったのですが、僕が知っているかぎりではいらっしゃいませんでした。

■畏敬なるものの美しさ
〈山本タカトの吸血鬼世界〉
山本タカトの描く、怖さと昏さと妖しさについて

 開場。
 19時。東雅夫、高原英理トークショースタート。司会は今野編集長。ゲストは山本タカト氏。四氏が着席します。山本タカトさんをお見受けするのはこれがはじめて。高原さんは黒ずくめで帽子をかぶっていました。山本タカト氏も紺色っぽいジャケットに帽子といういでたち。

 今野編集長から、進行が説明されます。
 まずは、東さん高原さんから吸血鬼とはなにかという、日夏耿之介の「吸血妖魅考」のギリシャ起源の吸血の怪からはじまってポリドリ以降の系譜から、ゴスを介して、「ポーの一族」にいたるまでの吸血鬼作品が紹介されます。
 つづいて、山本タカトさんが吸血鬼に惹かれるまでの興味深い経緯が紹介されます。

 高原さんによると、日本の吸血鬼像は少年少女が主流で、成長しない、年齢不詳の造形をしていて、欧米では大人の吸血鬼像が主であるのとは大いに文化としての土壌が異なるのだそうです。野田秀樹の演劇や、東さんがたとえに出された、うる星やつらの映画「ビューティフルドリーマー」の無限に繰り返される学園祭の前日のように大人になりきれない独特の日本文化を象徴しているかのようとのことでした。

 もっとも、と東さんの話は続いて、怪奇小説ファンにはおなじみのポリドリやシェリー夫妻が集ったスイスの湖畔の一夜、「吸血鬼」や「フランケンシュタイン」が誕生するきっかけとなったあの夜の語らいも、貴族ではあるけれどもバイロンも含めて当時の不良少年少女であるかれらの若さから生まれたパンク小説ではあるそうなのですが。

 つづいて日本で明治大正に吸血鬼が文化として、いかに受けいられてきたかの話。まだ日本人が吸血鬼やフランケンシュタインを認識する以前にすでに翻訳されたものが発表されていたみたいで、当時はよくわからないながらも、なんとなく珍妙なものが入ってきたという印象だったそうです。挿絵では「新青年」にすでに貴族風の黒マントのドラキュラ伯爵像が描かれていたとのことですが。

 そのあとは吸血鬼映画の話。ヘルツォークの『ノスフェラトゥ』。そのリメイク前のムルナウ作品にも話は及びます。名前は忘れてしまいましたが、南米のラストは街がペストに襲われ、ネズミばかりが走りまわる映像の美しい作品について、高原さんが熱をこめて語られていました。

「夜明けのヴァンパイア」こと「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の話は総じて何度も話題に出ました。僕もこの映画観ているはずなのに、あまりおぼえてなくていけないなあ。

 今野編集長がインタビュー。山本タカトさんの好きな吸血鬼映画や文学作品について。「処女の生き血」やなんといっても「ポーの一族」。種村季弘さんの「吸血鬼幻想」および60年代の象徴でもあった雑誌「血と薔薇」。話は東さんにも受け継がれ、野中ユリさんの美的イメージコラージュの挿画などについて。唐十郎、石井隆、竹中英太郎、バタイユ、夢野久作、と連鎖のようにつづいてゆきます。

 高原さんの今年の出版物刊行予定なども語られる。
 東さんは山本タカト氏が表紙を描かれている村山槐多耽美怪奇全集を手にして紹介されてました。学研からの伝奇ノ4巻目。美とグロテスクの融けあいに息を呑んでしまいます。うわ、これほしいな。なんで買っておかなかったんだろうとはげしく後悔。

 ほかにも精緻な挿画と印刷技術の話なども展開されます。いまは印刷技術は昔より向上したけれども、手仕事がへってしまったために微細な独特な絵画表現が減ってしまって残念なことなど。
 山本タカト氏の好きな詩や、浮世絵師にまで話は及びます。

 華美な演出は一切ありませんでしたが、ずっしりとした充実のトークショーでした。
 
 そのあとは質疑応答。トークショーにはあまりお出にならない山本タカト氏であるだけに貴重な機会です。おもに美術を学んでいると思しき方からの質問が続きます。ひとつひとつの質問に対して、非常に丁寧に答えてゆかれる山本タカト氏。

 閉演。佐藤弓生さんが自分の坐っていたすぐ後ろの席にいらしたのでご挨拶する。2階のギャラリーへ。

 とある編集者さんに山下昇平さんを紹介してもらえる。山下さんはギャラリーに積まれていた「てのひら2」の僕の作品を読んでくださって、恐縮というか、恥ずかしいというか。

 山本タカト展では、山本タカト氏がサインされたり、談笑されたりしてました。

 展示では個人的には「吸血鬼(浮遊)」や「こわれた巣箱」「コーリング 闇からの呼び声」が好きです。でもいちばん好きなのは「灰の帳のように」で少女ふたりが横たわっている作品なのですが、これがもう想像力を刺激されるというか、反則というか、血がほんの微量にしか、ほんとに絵に間近に寄らないとわからないくらいにしか描かれていないのにもかかわらず吸血鬼であることがはっきりとわかる作品で、魅了されまくりました。目が離せなくなるくらいに。息もできない美しさ。

 ギャラリーのエディション・トレヴィルの刊行物を観たりする。画集を倒しかけるあほな僕がいました。高原夫妻ともお話できました。

 帰りは雪道になっていました。降りしきる雪の夜の吸血鬼イベントでありました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月 6日 (水)

島本理生「あなたの呼吸が止まるまで」

あなたの呼吸が止まるまで Book あなたの呼吸が止まるまで

著者:島本 理生
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 舞踏家の父親とふたり暮しの小学6年生の少女、朔の物語。趣味はノートに物語を書くこと。

 12歳の少女にとって、こうした環境はいかがなものなのかな、と思いながら、読みすすめてゆくと、やはりとある「暴力」が彼女を見舞います。

 突然の悲劇を前に、朔のとったある仕返しのかたちとは。

 一作一作、技巧がうまいなあとつくづく思います。「ナラタージュ」の一登場人物のエピソードとも微妙にリンクしているような。
 友達の鹿山さんがいい感じ。彼女の出番がもう少しほしかった。でも、彼女が父の舞踏仲間とからんでいたら、後半は絶対別の展開になっただろうな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月 5日 (火)

酒見賢一「中国雑話 中国的思想」

中国雑話中国的思想 (文春新書 596) Book 中国雑話中国的思想 (文春新書 596)

著者:酒見 賢一
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 新書。タイトルのとおり中国をめぐるエッセイ集。
 中国拳法をめぐる断章は専門的過ぎて、正直よくわからなかったのですが、全体を通して、笑わせてくれながらなおかつためになるような内容。
 個人的には「李衛公問対」の一節がよかった。そうかあの書は軍事オタクの書いた「歴史番組」なのか。でもこれだけ斬新な切り口をすでに持っているのならば、隋末唐初も作品として書いてほしいですよ。酒見賢一の描く李密なんて想像しただけでも笑いがこみあげてきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月 2日 (土)

剣客之恋

剣客之恋 DVD 剣客之恋

販売元:マクザム
発売日:2006/07/21
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 香港お正月映画。

 原題は『老鼠愛上猫』。鼠が猫に恋をした、とでも訳すのかな。

 中国の古典武侠小説「三侠五義」をベースにした話。

 主演はアンディ・ラウとセシリア・チャン。

 アンディ・ラウが展昭なのはわかるけど、えっ、セシリア・チャンが白玉堂なの(原作では男。美貌だが、性格はきわめて傲慢。展昭とはなにかにつけてやりあうけれども、たいてい敗れる。だけど、なぜか憎めないところがあり、存在感は主役をしのぐくらいにあり、人気もある。)と、やや引いてしまったけれど、まあ、凛凛しいのでいいか。男装している場面はどうしても男には見えなかったが。

 ということは日本語題の「剣客」とは白玉堂のことなのか。展昭は剣客じゃないものな。
 ちなみに、展昭が皇帝から賜れたあだなが「御猫」で、白玉堂の通称が「錦毛鼠」なので、原題の鼠と猫はそれぞれ、白玉堂と展昭のことをしめしてます。たぶんw

 ストーリーには、おいおいなところも多多あるのだけれども、お正月映画であることを思うとこれはこれで楽しくていいのかも。
 展昭、包拯、白玉堂という主役級はもちろんのこと、公孫先生や月華、陳林、それに包拯の部下から、白玉堂の不良仲間まで原作にあわせたかたちで人物がきちんと登場してきて、ストーリー上や使用されている武器など、にやりとさせられる場面がいくつかあるので、原作が好きなひとには、かなりおすすめではないかと。
 物語そのものがわかりやすいので、まったく知らないひとでも素直に楽しめそうです。
 個人的には月華を演じているひと(リー・ビンビン)がかわいらしいと思った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年1月 | トップページ | 2008年3月 »