« 向島百花園十五桜会百物語 | トップページ | 京都イベントレポ(その1) »

2008年8月14日 (木)

侠女の系譜(勝山さん作品の予習として)

 勝山海百合さん応援日記(のつもりw)。

 8月25日に勝山海百合さんのアジアン怪談短編集『竜岩石とただならぬ娘』が刊行されます。ダ・ヴィンチの記事および、海百合さんからじかにメールでうかがったところ、ただならぬ娘とは、唐代伝奇に登場する侠女、聶隠娘なのだそうです。
 たしかにただならない娘ですw

 予習もかねて、この聶隠娘とはなにものかをまとめてみましょう。
 ネタバレはしないつもりですが。

 原典テキストの唐代伝奇の聶隠娘の物語は、岩波文庫『唐宋伝奇集』の下巻や平凡社の中国古典文学大系の24巻『六朝・唐・宋小説選』(たいていの図書館にはあります)に「空を飛ぶ侠女」として、おさめられてます。

 さすがに現代の物語になれた目で読むと、戦闘場面の記述がややとぼしく、迫力に欠けたり、ここで魔法を使うのはどうなんだろう、とか不満は出てくるのですが、なんといってもヒロインの輪郭と性格がはっきりしていて、好感をもって読めます。
 鏡が重要な役割をしめすのもポイントです。

 それまでの中国の志怪作品にも、たとえば村人を困らせる巨大な白蛇と剣をもって戦う「捜神記」の李娘など、戦闘系の女性をあつかった作品はありますが、聶隠娘のきわだっているところは、義によって動くという点でありましょう。空を飛べるほどの跳躍能力を持ち、悪いやつを非情なまでに一撃必殺の匕首で殺してゆく。そのすがたはまさに侠女です。

 井波律子「破壊の女神 中国史のなかの女たち」という本では、「侠女の系譜」という章において、この聶隠娘をはじまりとした、中国小説の戦闘型少女の移りゆきが丁寧に解説されています。

 日本でも、この聶隠娘をあつかった作品がいくつか、書かれています。以下所感を述べてみます。
(佐藤春夫の作品に関しては調べきれてないです。すみませんw)

 海音寺潮五郎『蘭陵の夜叉姫』
 短編集の表題作品。旺文社文庫ですが、入手はやや困難。amazonやbk1では購入できるみたい。
 特異な身体能力をそなえた聶隠娘の戦闘描写が切れ味がよいです。でも、原作のイメージが好きなひとは彼女の性癖にちょっとがっかりするかも。

 田中芳樹「黒道凶日の女」「騎豹女侠」
『黒竜潭異聞~中国歴史奇譚集~』に収録。(実業之日本社)

「黒道凶日の女」
 唐の将軍と聶隠娘のつかのま出会いを描いた作品。戦を起こすには最悪の状況というべき黒道凶日に、かつて、ひとたびの契りを交わした聶隠娘が将軍の前に忽然とあらわれ、行軍を勝利へと導いてくれる。
 黒豹の背に乗った凛然たる侠女が雪原を疾駆するという、美学上の観点からもきわめて整った作品。中国史もので知られるこの作者だけれども、短編の最高傑作のひとつだと思う。
「騎豹女侠」
 黒道凶日では薄められていた魔術風の聶隠娘が描かれている。
 これまで、聶隠娘といえば白い驢馬に乗ってあらわれるところを、黒豹に変えたあたりは、アレンジとして絶妙だし、疾走感があり、雰囲気にもあっていて、卓抜した冴えを感じます。

 ほかにも探せばあるかも。
 井上祐美子さんにもあるらしいけど、調べきれてないですw

 さて、このただならない侠女を勝山さんがどのようなかたちで、「自分なりの解釈で」書かれたのか、まこともって楽しみです。姿勢を正して25日を待ちましょうw

|

« 向島百花園十五桜会百物語 | トップページ | 京都イベントレポ(その1) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/185287/22973258

この記事へのトラックバック一覧です: 侠女の系譜(勝山さん作品の予習として):

« 向島百花園十五桜会百物語 | トップページ | 京都イベントレポ(その1) »