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2008年9月10日 (水)

黒史郎「100KB(キロババア)を追いかけろ」

100KB[キロババア]を追いかけろ Book 100KB[キロババア]を追いかけろ

著者:黒 史郎
販売元:講談社
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 7月初旬に発行された黒史郎さんの長編作品です。やっと、読んだという感じで、すみません。 bk1ではこちら

 ぶっとんだタイトルですが、内容も振り切れていますw
 舞台は鶴見。7月5日から23日までのできごとです。

 白髪を振り乱した白い着物の老婆がものすごいスピードで車を追いかけてきたり、追い抜いたりする、交通事故を起こすものには制裁をも加えるという通称「100キロババア」という都市伝説を軸に話が進みます。

 メインとなる人物は、かつて凄絶な一家惨殺事件に遭遇し、いまは劇団員としてこの街に戻ってきたカオル。追突事故を起こして意識不明となった叔父を持つ、トオル。都市伝説マニアでチャットが好きなジュン。三人とも高校で友人で、5年ぶりに再会したばかり。まだ22歳ながらも、それぞれ心に深い傷を負ったものばかり。とりわけ、カオルの傷は、これだけの惨劇に遭遇しているのだから当然かもしれませんが、深すぎて読んでいて、つらかった。そうした青春群像劇としても読めます。

 この著者の最大の持ち味のひとつである、疾走感がテーマにあっていて、いかんなく発揮されています。カオルが全力で走る場面が特に好き。走る女性の姿は美しい、と思わせてくれます。
 ことに後半の「合唱」の断章からの高揚ぶりはただならない熱気を発していて、そこからラストまでの120ページほどは一気に読んでしまいました。
 前半に散らばれた謎の収縮ぶりもあざやかです。
「黒水村」でもおなじみの登場人物のテンポのよい会話のやりとりと、悪役の針の振り切れた狂気ぶりの描写はまさに黒史郎節が効いているというべきでしょうか。

 この著者にとっては、いつもながらのことですが、「ありそうでなかった」エンタテインメント作品です。
 カオルの河童の話も読みたい。

 鶴見をもっとよく知っていれば、もっと楽しめたのだろうなと思います。
 表紙は読了後に見返すと、作品の細かいところまで再現されていて、こじゃれております。

【おまけ】講談社特別無料配布品「100KBを追いかけろ 黒沼刑事の夏・編」

 100KBの登場人物のひとり、黒沼刑事に焦点をあてたサイド・ストーリー。黒沼刑事にこんな生活や日常があったとは。彼が惨殺事件の被害者カオルにどういう感情を向けていたかも知れて、たいへん興味深いです。

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