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2009年9月 7日 (月)

【読書】黒史郎「夜は一緒に散歩しよ」文庫版

夜は一緒に散歩しよ(MF文庫ダ・ヴィンチ) Book 夜は一緒に散歩しよ(MF文庫ダ・ヴィンチ)

著者:黒史郎
販売元:メディアファクトリー
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 黒史郎さんの第1回『幽』怪談文学賞長編部門受賞作の文庫化作品。
 著者にとってのデビュー作にもあたります。加筆修正版です。

 僕は幽ブックスの単行本版も持っているので、文庫一読後に読み比べてみたりもしました。

 大小取り混ぜて、かなりの分量が修正され、加筆もおこなわれております。単行本版の際にはやや、くりかえしの叙述や文章の凹凸も感じたものですが、文庫化に際して、全体を通して地ならしがされ、整いもあらたになった印象です。

 ただし、筋や語り口は変更されていません。

 オカルト作家の横田卓郎は工芸大学在学中に知りあった妻を早くに亡くし、3歳になる娘の千明とともに暮らしている。
 だが、千明には普通の人には見えないものが見えるらしく、彼女の描く絵には不気味なものばかりがあらわされる。
 やがて、卓郎と千明の周囲のひとびとが少しずつ奇怪な行動をとるようになり、ついには謎の失踪したり、不吉きわまりない死を遂げたりするまでにいたる。

 ストーリーテラーの黒氏ならではの底に黒いものが流れるような不気味な導入部。主人公たちの住んでいる神奈川県の鶴見とおぼしき工業都市の夜の河さながらの平穏ならざる雰囲気が伝わってきます。

 初読時はストーリー進行時の視点の切り替えがやや唐突であったこと、ラストがいささか書き急いでいる印象があった本作ですが、大幅な加筆によってだいぶそのあたりの緩やかさも一変しています。

 単行本で読んだときよりも、登場人物の幾人か、卓郎の妻になる美樹さんや弓倉摩耶美の存在を身近に感じました。



 表紙の山下昇平氏による千明ちゃんの造形、および作品の主舞台と思われる鶴見の町並みには一見、すごみがつたわってきます。

 巻末には、黒史郎さんの作家としてデビューされるまでの波乱ありまくりの経緯も披露されていて、ファンは必読です。
 また、現在も続いている黒さんの「妖怪仲間」との出会いや交流の経緯も語られていて、あとから来た身としては、たいへん興味深く読みました。

 巻末の京極夏彦氏による、本作の「怪談」定義をめぐる一文は、怪談好きには、これまた必読の箇所です。

 さらに巻末には、日本物怪観光の天野行雄氏、山下昇平氏という二大アーティストの寄稿も収録されており、お得感ある一冊になっています。

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