2009年4月 8日 (水)

第2回幻視コレクション「現実に溢れる虚構」

 1000字小説応募企画の雲上の庭園「幻視コレクション」。第2回目は『現実に溢れる虚構』というテーマです。メルマガ雲上にて、これまで伏せられていた作者名と各選者によるお気に入りの五作が増刊号にて発表されました。

 作品はこちら
増刊1号

増刊2号

 僕の作品は3作で、こちらでした。

25┠》 蜃気楼

38┠》 猫とマオ老人
      
44┠》 旅の終わりに

 作者名公開と各選者によるお気に入りの5作選評はこちら

 5月の文学フリマに向けて、新しい展開がありそうで、いまから楽しみです。

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2008年9月 3日 (水)

伸縮怪談感想

 ネタバレあり感想です。ご注意。

山口萩雄「落花」

 さすが、というべきか500文字作品が、もっともまとまっています。不気味さ、残酷さ、色彩がもたらす視覚的イメージもいちばん鮮明になっている。ハイビスカスやハチドリをモチーフにして、この残酷さと切なさは忘れがたい印象を残します。

勝山海百合「マコの恩返し」
http://d.hatena.ne.jp/umiyuri/20080825

 宴の会場でうかがった「ヒモロギヒロシを意識」「うる星やつらの」云云は、作品を読むうえではいったん、頭から消して、感想を書いてみます。
 マコかわいいよ。マコ。伸縮怪談としては、変化球ですが、読者を楽しませるための技巧であれば、それもまたよし。
 同じ話を単純に三つ並べるだけではなく、視点を移動させて書いてます。読み手を楽しませようとする作者の心意気が感じられて好印象。
 でも、マコの語り口が800と1200でちがってないかな。
 ラストの「酷似」については、そのままずばりあらわすのではなく、描写か男の独白によって、そう感じさせたほうが、浮き彫りになり、心に残るのではと思いました。フィギュアなだけに。

金子みづは「波間で、手を振るように」
http://zigzaggar.blog63.fc2.com/blog-entry-137.html

 金子みづはさんは「てのひら2」で前後して掲載されただけに、勝手に意識しています。吸血鬼イベントでは遠くからもお見かけしました。ブログも読んでいます。創作と作者の日常とは別のものと意識しておりますが、今回の作品を一読して、いろいろ感じ入るところがありました。祈っております。
 前置きが長くなりましたが、感想。
 全体をとおして、文字の並びが整っていて美しく、ちらりと眺めただけで良作であるとうかがい知れました。細密画を目にしているか、快い音楽を耳にしているようでした。今回の優秀作品のうちでもっとも好きな作品です。
 二重映しの情景の美しさ。そうかと思えば、急に現実に引き戻される不安と孤独。腕を伸ばしても届かないせつなさ。胸の深いところで情感がざわめいてきます。

 おまけの300字については、さすが金子みづはさん、と声を大にして言い添えておきます。

亜紅「空気の違う人」

 500字、800字、1200字ともプロットに大きな違いはなく、時間の経過もそれほど変わっていない。それでいて違和感がないところに技巧を感じる。最後の一節に受けるつき離されるような印象も字数に関係なく印象深かった。

告鳥友紀「歯のある日常」

 1200字作品ではじめて、真相にせまる事実が明かされるという趣向。なのだけれども、500字でも、800字でも、これはこれで作品として成立していて、怖さのポイントが違うという水際立った怪談。

行一震「闇の奥の階段」

 これもまた、視点の切り替えによって、多角的な角度からひとつの事象を描き、幅の広がりをみせています。ひとりひとりの悩みが違うところや、思うところが違うところが読むひとの共感を得ることでしょう。題材の選び方からしてよいです。

坂巻京悟「万年氷」

 500字は、わらべ歌風。800字は民話風、1200字は小説風に描かれています。民話風で「謂れなき汚名」とはなんだろう、と思わせておいて、小説風で解明させる。民話で語られる伝承と実際の事件や実感のギャップがあるところに、作者の思惑が感じとれ、深みがあります。

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